浦環保第3 2 2 号
平成1 7 年2 月2 日
千葉県知事 堂本暁子 様
浦安市長 松崎秀樹
東京国際空港再拡張事業に係る環境影響評価方法書に対する意見について
東京国際空港再拡張事業に係る環境影響評価方法書に対する環境の保全の見
地からの意見は下記のとおりです。
記
今後における当該事業に係る環境影響評価の実施にあたっては、環境影響評
価方法書に記載されている内容を適正に実施するほか、次の事項を踏まえて、
環境影響評価準備書を作成することが必要であると考えます。
なお、本市は、再拡張後において、新たな飛行ルートが市域近傍に設定され、
住宅系地域でありながら航空機騒音の多大な影響を受けることとなるため、昨
年6月に「東京国際空港航空機騒音・飛行高度コース実態調査及び航空機騒音
予測」調査(別添のとおり)を独自に実施したところ、北方面に向かう離陸機
のほとんどが標準飛行経路を外れ、本市の陸域上空を通過していることや特異
音を発している着陸機があることなどが明らかになりました。
このようなことからも、市民の生活環境に十分に配慮がされた環境影響評価
を行うよう求めます。
これまで、再拡張後の深夜早朝時間帯(23時から6時まで)の運航に関して
は、千葉県及び本市を含む関係市町村において、現在、江戸川区で実施されて
いる「23時から6時までの時間は江戸川区上空を飛行しない」という取り扱い
をD滑走路供用後も千葉県に適用するとともに、同時間帯における国内旅客定
期便を除く離着陸便の運航は、「D滑走路供用後も千葉県の陸域を通過しない
経路」とすることを国に示しております。また、発着回数40.7万回を超過する
ことについても、本市としてはその影響について危惧しているところです。
以上のようなことから、深夜早朝時間帯における航空機の本市近傍の通過は
海域上空であっても、市民の生活環境に多大な影響を及ぼし、不利益を被るこ
とになることから認められないところです。
1 全般的な事項
( 1) 環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法に関する情報を
公表したうえで、市民の生活環境への影響について回避・低減を図って
いくことを基本として、環境要素ごとに本市の地域(立地)特性や住宅系
(高層マンションが多い)地域であることなどに十分に配慮し、予測・評
価を行うことが必要である。
( 2) 環境影響評価準備書においては、航空機による環境への影響を予測・
評価するにあたっての前提条件として、飛行ルートを地図で明確に示す
とともに、運航計画の使用滑走路別、飛行形態別、時間帯別の機数等を
明らかにすることが必要である。
なお、飛行ルート及び運航計画等の設定にあたっては、今後の環境影響
評価における調査・予測の結果を基に、航空機による環境への影響をでき
る限り、回避・低減することを基本に進めることが必要である。
( 3) 航空機による環境への影響の回避・低減に向けた環境保全対策を講じ
るためには、その検討過程を含めて環境影響評価準備書で市民等に分り
やすく明らかにすることが必要である。
2 個別事項
(1) 大気質
本市の調査で、東京国際空港の現行の南風運用時における北方面に向か
うほとんどの離陸機が本市の陸域上空を通過していることが明らかになっ
たことからも、その現状を踏まえ、本市の猫実一般環境大気測定局及び美
浜自動車排出ガス測定局を方法書に記載された調査地点(図4−2.2大気質
の既存調査地点)に加え、その測定結果を基にして予測・評価を行うこと
が必要である。
また、航空機燃料に含まれるベンゼン割合は、0.1体積パーセント未満
であり環境影響評価の項目としないようであるが、再拡張後は、本市近傍の航空機の通過が増大することからも、航空機自体の排出ガス中に含まれ
るベンゼン濃度を調査したうえで予測・評価を行うことが必要である。
(2) 航空機騒音
@ 東京国際空港の現行での南風好天時の着陸のための飛行ルートは、本市への騒音の影響が少ない東京湾の中央部を飛行し、C滑走路へ着陸する運用が主にされているが、再拡張後は、南風好天時であっても本市の南側近傍の海上を通過するB滑走路LDA着陸が主に運用されることにな
るとともに、南風悪天時では、B滑走路及び新D滑走路のILS着陸が同時に運用され、本市の北側と南側の両方に航空機が通過することになる。
また、本市の近傍を通過する北方面に向かう離陸機については、現行の1時間あたり9便が再拡張後は18便に増大することからも、南風が吹くときには、1日中航空機騒音の影響を受けることになる。
さらに、高層マンションが集約する住宅地域が多いことも考慮する必要がある。
以上のことから、マンション上層階も含め、航空機騒音の最大騒音レベル・騒音発生回数を月・週・日・時間帯別に予測・評価し、その騒音の影響の回避・低減の検討内容についても明らかにすることが必要である。
A 再拡張後における本市の場合は、南風悪天時という特定のときに航空機騒音が集中して発生することから、現行の航空機騒音に係る環境基準(WECPNL)で、航空機が飛行していないときを含んで年平均値として評価されることは、人がうるさいと感じる騒音感覚との間に乖離があり、過少に評価される危険性があることから、これらの点を十分に配慮した評価を行うことが必要である。
また、静かな住宅街における夜間の航空機騒音については、たとえ1回であったとしても影響が大きく、やすらぎや安眠等の妨げになることから、十分考慮する必要がある。
B 離陸機については、東京湾内で十分な飛行高度を確保したうえで、陸域に進入するという騒音の海上処理を基本とした標準飛行経路の飛行が原則であるが、本市の調査で標準飛行経路のばらつきが見られ、特に、南風時の北方面に向かう離陸機のほとんどが標準飛行経路を外れ、本市
の陸域上空を通過しその騒音の影響が確認された。
このようなことから、現行における離陸機の標準飛行経路のばらつきを検証し、標準飛行経路の飛行を徹底させる方法等について明らかにすることが必要である。
また、着陸機についてもばらつきが見られたので、同様に対応することが必要である。
C 本市調査の「音響パワーレベルの着陸機の測定」において、特異音(“ポーッ”という汽笛のような共鳴音)が測定された。この結果では、特異音が発生しているときとしていないときで、B747-400Dが約4.8デシベル、B777-200で約2.1デシベルという騒音レベルの差かあったことから、この原因の究明と機種別騒音データの検証を行うとともに、このことを踏まえて航空機騒音の予測・評価を行うことが必要である。
(3) 発着回数
再拡張後の発着回数については、「年間の発着能力を現在の28.5万回から40.7万回に増強し、発着容量の制約の解消等を図る」と方法書の事業目的に記載されているが、再拡張後の発着能力は深夜早朝時間帯を含めても40.7万回を上限とすること。
(4) 航空機の飛行による低周波騒音
低周波騒音の影響も考えられるので、本市の住宅地に調査地点を加えて予測・評価を行うことが必要である。
(5) 周辺海域に与える影響
本事業が海域に与える影響は多大であり、東京湾の流れがどのように変わり、それが生態系などにどのように影響を与えるのかという視点で予測・評価を行うことが必要である。
(6) 電波障害
航空機によるフラッター障害も考えられることから、アナログ地上波に限定することなく、地上波デジタル・衛星放送電波(BS、CS)を含めた予測・評価を行うことが必要である。 |