季節の食卓

みなさん、こんにちは。フードビジネスコーディネーターの加賀谷恭子です。

仕事がら、いろんな食材を扱って調理をしています。食材は、季節ごとにおいしいものがあって、それは普段忘れかけている昔ながらのものもあれば、新しく生まれたものまで、本当に様々。折角ですから、これから私が出会ったいろんな食材を少しずつ取り上げて、食材のことから考えて作る“季節の食卓”をテーマに、コラムを毎月更新していこうと思っています。 
中でも、私はお野菜を中心とした極々シンプルな調理のごはんを得意としております。だって、農家のみなさんが手間隙かけて作った、自然のチカラが溢れんばかりのお野菜に触れると、余計なことはしちゃいけないなって思うんですよ。お野菜とじっくりお話して、一緒に調理法を決めたりしています。

複雑な調理や、派手なディスプレイはしません。普段、おうちで出来て、いつもよりちょっぴりステキ…という食卓を提案していきます。食べ物を見たり、触ったり、おうちでのごはんが楽しい!って思っていただけたらうれしいです。気が向いた時に、ふらりと見に来てくださいね!


第21回 「食事制限アリ・・・でも、おいしい!食卓の巻」


先日、よくお店に来てくださるお客様から、こんな相談を受けました。
「料理好きな友人は、旦那様が体調を崩して以来、病院の指導で油もダメ、塩もダメ、お砂糖もダメ・・・という食事を作らなくてはいけなくなりました。彼女は、もう家族に美味しいものを作ってあげられない、大好きな料理も楽しくない・・・と、とても落ち込んでしまって。何か良いレシピや、調理器具を教えてください。」

実は、こういったお話は決してめずらしいことではなく、糖尿病や高血圧などのいわゆる生活習慣病に苦しむご本人や、そのご家族の方から、何を食べたら良いか、何を作ったら良いかと、よく聞かれます。
「気をつけましょう」という程度の方から、「制限」という方まで様々・・・

診てもらっている主治医の先生のお話は絶対ですから、「このレシピで作る料理なら大丈夫ですよ。」という無責任なことは言えませんが、いろんなお話を聞いたり、実際に見たりした中で、私が思う食卓を作ってみようと思います。

「おいしい」ってなんだろう?というところから考えてみませんか?
制限しなくてはいけないものは、制限しなくてはいけない。でも、あれもダメだ、これも使えない・・・と、作る人が憂鬱になりながら作った食卓は、絶対的に楽しくない!本来は病気の人ほどキチンと食事からバランス良く栄養を取らなければ治るものも治らないのに、これでは逆効果だと思うのです。「調味料を使えないから、さつまいも蒸かしただけで味ついてないけど、仕方ないよね。」と言って出されるのと、「これ、八百屋さんもイチオシの千葉の紅あずま。今年はすごくいい出来だって。蒸かしたから、とにかく何もつけずに食べてみて!」と言われるのでは、どちらがおいしそうですか?

結局のところ、素材勝負で楽しめる料理がいいと思うんです。料理は、まず素材選びから。自然と調和の取れたものを食べるって、とっても大切なことだと思います。手前みそですが、ロコディッシュでお出ししているごはんが一番適しているのではないかと思い、今回は特別にロコディッシュでお出ししているお料理レシピを公開しちゃいます!

それでは早速、食事制限アリ・・・でも、おいしい!食卓です。

「おいしい!」と思う時、視覚から得る情報が70%くらい影響していると言われています。味覚のみの影響は10%。満足に好みの味付けに出来ないのなら、まずはその他の90%を楽しくしちゃいましょう!

いつもと違う器遣いをしてみたり、たまにはテレビも消して、好きな音楽を流してみては?おいしそうな食卓を見ながら、今日あったことをお話しながらの食事。食事が楽しい!=おいしい!食卓になったらステキです。

もちろん、今回のレシピで病気が治るというものではありません。

制限があっても楽しく料理が出来て、みんなで楽しく食事が出来て、

「おいしい!」と思っていただく手助けになればいいな・・・と思います。

それでは、お料理の説明です。

多古米ごはん

新米ですよー。このおいしい時期によく味わって食べなくては!口の中に広がる香り、旨味と甘味を楽しんで。玄米は精白米と比較して、食べた後の血糖値の上昇が緩やか。栄養バランスも良いので、時には玄米も良いと思いますよ。多古米は水分量も多く、玄米でもしっとり炊き上がります。

  1. 米は洗って、分量の水と塩をひとつまみ入れ、ざっくり混ぜて2時間〜8時間浸水させて炊きます

    * 玄米は、米の種類によってパサついてしまうものもあります。炊飯器に玄米炊きモードがついている場合は、使った方が良いです
    * 圧力鍋をお持ちの方は、白米も玄米もぜひ圧力鍋で!ふっくら感が違います

 

生青海苔と、とろろ昆布のおみおつけ

だし勝負のおみおつけで、通常よりも味噌を減らして味わいます。まずは、きっちり出汁を取って。青海苔やとろろ昆布から出るだしとの相乗効果でとっても香りの良い汁物に。味噌などの発酵食品は身体のバランスを調えるのに必要なもの。ただし、塩分も含まれているので、出汁を生かして味を補うという使い方をします。

まず、だしとりから。今回は煮干とかつお節の出汁です。
  1. 煮干を指先で軽く一掴み、頭と腹の部分を取り除き、身は2-3個にちぎって水に浸しておきます。時間があれば、半日くらい漬けておくと良いですよ
  2. 鍋を中火にかけ、沸騰したら弱火にして2分
  3. 強火にしてすぐに、花かつおをひとつかみワサーッと入れて、ひと混ぜしたらすぐに火を止め、放置します
  4. かつおが沈んだら、味噌こしで煮干とかつおをササッとすくいます
    * ざるにペーパーを敷いて、きっちり濾すのも良いですが、味噌こしですくって、かつおが少し残ったりしているくらいの方が田舎のおばあちゃんのおみおつけみたいで私は好きです。
  5. だしが取れたら、それを生かすように少しずつ味噌を入れます。
  6. お椀に生青海苔、とろろ昆布を入れ、汁を注ぎます

里芋の網焼き

おいしい里芋の季節になりました。そのままコロコロ網焼きにすると、皮が蒸し器代わりに。ジューシーさを保ったまま仕上がります。皮が剥いてあると、食べやすくてついつい食べ過ぎてしまうので、食卓で皮を剥きながら食べるというのも、ゆっくり味わう工夫です。塩の付けすぎ防止のため、アタマだけ皮を剥いて先に塩を少し振っておきます。

  1. 里芋は、皮を指でこすりながら洗い土を落とします

  2. 鍋に里芋とかぶるくらいの水を入れて火にかけ、竹串が刺さるくらいまで茹でます

  1. 皮付きのまま、網でコロコロ焼きます

  2. 中から水分が出てきて、おいしそう♪竹串がすっと刺さされば出来上がり

  3. 皮を少し剥いて、岩塩を振ります

焼きなすのサラダ

秋なす。おいしいですよね。なすは油をたくさん吸うので、網で焼きなすにします。大根もこれからおいしい時期。無農薬のものが手に入ったら、皮ごと食べちゃいましょう。みょうがも露地ものが出回って香りが良い時期ですし、大葉などの香味野菜も使って、少ないドレッシングでも香り高く。

  1. なすを網で焼きます。皮は焦げても気にしない。一番太いところを軽く押してみて、柔らかくなったら網からおろします

  2. 冷水を用意して、なすのへたを切り、指を冷やしながら熱いうちに皮をむきます

    ※なすを一旦、冷水に浸して冷やしてから剥きたくなりますが、冷やし過ぎると皮が剥けないし、なすの旨味が流れてしまってもったいないので、熱いけれどがんばってそのまま剥くようにと、小さい頃から母に言われているので守っています

  3. 剥いたなすを容器に入れて、冷蔵庫で冷やしておきます
  1. 大根は皮ごと千切りに、みょうが、大葉も千切りにし、ふんわり混ぜ合わせます

  1. 冷やした焼きなすを裂いて器に盛り、上に4.のお野菜を山盛りにします

  2. 焼きなすから出た汁気と、ポン酢、ごま油を勢い良く混ぜて乳化させてトロっとさせたドレッシングをかけ、金胡麻をふります

ラフティ

ラフティは、沖縄料理で豚の皮付き三枚肉を角煮にしたもの。下茹でをして、しっかり脂を抜いてから味付けします。豚は加熱しても壊れにくいビタミンB1や 、身体に必要な必須アミノ酸がバランス良く含まれています。肉を全部ガマンするよりも、こうしてしっかり脂抜きして作ると、少量なら楽しめる方もいらっしゃるのでは?砂糖もミネラル豊富な黒糖を使います。

  1. 豚の皮付き三枚肉1kgを塊のまま鍋にいれ、ひたひたの水を入れて火にかけ、沸騰したら湯を捨て、また水を入れてもう一回ゆでこぼします
  2. 肉についているアクを水で洗い流してキレイにし、水を入れて今度はそのまま1時間くらい茹でます
  3. またお湯を捨てて、肉を好きな大きさに切ります
  4. 肉がかぶるくらいの水を入れ、泡盛を1cup、黒糖1/2cupを入れ、肉が箸で簡単にほぐれるくらいまで、コトコト煮ます。
  5. 醤油1/2cupを2回に分けて入れます
  6. 一旦火を止めて荒熱が取れたら冷蔵庫に入れ、上に固まった白い脂を全部取り除きます
  7. 再度あたためて器に盛ります

そうめんかぼちゃ
錦糸かぼちゃとも言います。茹でてフォークでほぐすと、あら不思議。そうめんみたいにほぐれます。せっかくなので、そうめんみたいにそばつゆに漬けて食べます。かぼちゃの甘みを楽しめるよう、いつものめんつゆよりも薄いつゆでいただきます。
  1. かぼちゃは2つに割って種を取ります
  1. さらに2つに割って、熱湯で茹でます
  1. 身が濃い黄色になったら、茹であがり
  1. フォークでほぐします 気持ち良いくらいキレイにほぐれて、楽しいんです!

  2. ポン酢やめんつゆに氷を入れて薄めて、さっぱりといただきます

きのこあんかけ豆腐
  1. 舞茸、しめじ、えのきは、石づきをはずし、手で一口大にちぎります

  2. 出汁をあたため、酒、みりん、醤油を加えて味を調え、きのこを入れてサッと煮ます

  3. 沸騰している状態に、倍量の水で溶いた片栗粉を入れて手早く混ぜ、とろみがついたらそのまま強火で40秒。粉っぽさを消します

  4. 豆腐にとろりーんと、かけます
*寒い日には、豆腐を温めて熱々を食べるのもおいしい!

焼きしいたけ すだちしょうゆ
おいしいしいたけは、軸もおいしい!
  1. しいたけは、軸の先端の硬い部分だけを切り取り、太い軸には少し切れ目を入れておきます

  2. 熱した焼き網に軸を下にして並べ、軸が軟らかくなってきたらひっくり返して、しいたけの汁がジュッと出てきたら焼き上がり
すだちを添えて、醤油をほんのひと垂らし

 

それでは、食事制限アリでもおいしい!という食卓を盛り上げる今回の主役。

岩塩
ちょうどこの間、岩塩を採掘している方と知り合い、塩や食についてのいろいろなお話をしました。毎日使う塩。塩ひとつで素材を引き立たせることの出来るステキな調味料。でも、なんだか身体に悪いもののように言われることが多いのも事実。塩をもう一度、見直してみませんか?

選び方

普段、どんな塩を使っていますか?ロコディッシュでは、岩塩や海水塩など、いろいろな産地の塩を使っていますが、このパハール岩塩は本当においしい!と思った岩塩。約6億年前、海洋汚染のない時代から化石となったミネラル豊富な岩塩で、そのミネラルには血圧を上げる作用のものだけでなく、下げるミネラルも含まれているというもの。味も栄養もバランスが取れ、少量ですごく食材が引き立ちます。パハール岩塩については、実際に採掘しているプロの櫻井さんのコラムがわかりやすくて、とっても勉強になりますよ。

栄養

塩を控えるように言われていた高血圧の方が、この塩を使って良いか主治医の先生に成分を見せたところ、これなら適量であれば大丈夫だというお返事をいただいたそうです。「塩」と言ってもいろいろあって、その成分は様々・・・結局、塩の中のどの成分を控えなくてはいけないのか、どの塩ならどのくらいまで使って良いのかを調べてみるのも楽しいものです。

急に肌寒くなりましたね。
今月も、おいしい塩で秋野菜をもりもり食べて元気いっぱい!
来月もお楽しみにー♪