季節の食卓

みなさん、こんにちは。フードビジネスコーディネーターの加賀谷恭子です。

仕事がら、いろんな食材を扱って調理をしています。食材は、季節ごとにおいしいものがあって、それは普段忘れかけている昔ながらのものもあれば、新しく生まれたものまで、本当に様々。折角ですから、これから私が出会ったいろんな食材を少しずつ取り上げて、食材のことから考えて作る“季節の食卓”をテーマに、コラムを毎月更新していこうと思っています。 
中でも、私はお野菜を中心とした極々シンプルな調理のごはんを得意としております。だって、農家のみなさんが手間隙かけて作った、自然のチカラが溢れんばかりのお野菜に触れると、余計なことはしちゃいけないなって思うんですよ。お野菜とじっくりお話して、一緒に調理法を決めたりしています。

複雑な調理や、派手なディスプレイはしません。普段、おうちで出来て、いつもよりちょっぴりステキ…という食卓を提案していきます。食べ物を見たり、触ったり、おうちでのごはんが楽しい!って思っていただけたらうれしいです。気が向いた時に、ふらりと見に来てくださいね!


第8回 「手を合わせて“いただきます” しみじみ秋だなぁ・・・という食卓の巻」

今年は残暑が厳しいと言われていますが、それでも夜は涼しく、過ごしやすくなってきました。先日、ロコディッシュで虫の音の美しいBGM。おでんの香りに誘われて遊びに来てしまったのかと、ちょっと笑ってしまいましたが、なかなか風流なものでした。
秋は、とっても秋らしい食材が多く、日本人でよかったなぁー。と思える食卓が身近な食材で出来上がります。素朴で、丁寧で、身体を癒してくれる、そんな秋の食卓を前に、TVもクーラーも消して虫の声をBGMに、ちゃんと両手を合わせて「いただきます」。秋の夜長を楽しんでみませんか?

それでは早速、しみじみ秋だなぁ・・・という食卓です。


一汁三菜。和食の基本形です。
炊きたてのほかほかご飯に、ほっとするおみおつけ。旬の秋刀魚をシンプルに焼いて、秋茄子を揚げ浸しに、香り高い春菊を白和えに。最後の甘味には千葉県産の梨を。
素材の色も大切に、それぞれが引き立つようシンプルで温かみのある漆器や柔らかな白の陶器に盛りました。器の下には、落ち着きのある秋らしいクロスを敷いて。

なんだか、丁寧にじっくり味わってみたくなりませんか?

それでは、お料理の説明です。

まず、出汁をとりましょう。おみおつけと、秋茄子の揚げ浸しで使います。

出汁は余っても、数日は冷蔵庫で保管出来るので、1L作ってみます。1人前あたり1L作っておけば、翌日のおみおつけ分もあります。

  1. 昆布(10cm×10cmくらい)は、絞った濡れふきんで軽く拭いて汚れをとり、包丁で表面に切り目を入れます。
  1. 鍋に水(1L)を入れ、昆布を加えて、しばらく浸しておきます。
  2. 中火にかけ、沸騰直前に昆布を引き上げます。
  1. 削りがつおを片手でひとつかみ加え、すぐに火を止めてひと混ぜします。
  1. 削りがつおが沈んだら、絞ったぬれ布巾(またはペーパータオル)をざるに敷いて濾します。
濾した後のかつおと昆布は、佃煮に!
季節の食卓2月号“かつおと煮干の佃煮”参照

 野崎洋光のだしポットあっという間においしいだしのできあがり!
普段、時間がない時は「だしポット」も便利ですよー。


●ごはん

きっちり炊きましょう。とぎ方にも気を使って。

  1. 始めの2回は、ささっとかき混ぜながら水を入れて、10秒以内に流します。
    (周りの汚れを落とすためです。最初は水を吸収しやすいので米が汚れた水を吸わないようにすぐに流します)
  2. 次の2回は、米を潰さないように優しくといでから、40℃くらいのぬるま湯を入れて洗い流します。
    (たくさんとぐと、米のでんぷんが剥がれてしまうので、ほどほどに)
  3. ざるに上げて、30分くらい吸水させます。
  4. 水と少量の氷を目盛りまで入れ、さらに米油(なければ植物油)を4合に対して大さじ1杯いれ、ひと混ぜしたら炊き始めます
    (氷を入れて一旦冷やすことで、沸騰するまでの米の甘味を増す時間を長くします。米油は、昔から米飯屋さんが行っている方法。一粒一粒に旨みが閉じ込められます)
  5. 炊き上がったら、すぐにしゃもじで切るように混ぜ、蒸らします
  • 余ったごはんは、早めに冷凍用密閉容器に入れ、常温になったら冷凍庫へ。長く保温しておくより、この方がおいしくいただけます。解凍は電子レンジか、蒸し器で。
  • 炊飯器で炊く場合、4合くらいが一番おいしく炊けます。1〜2合炊くのであれば、3〜4合炊いてしまって、冷凍保存するのがおすすめ。
●里芋ときのこのおみおつけ

具がごろごろ入っているのが好きです。
(分量は1人前あたり)

  1. 里芋(小3個)はたわしで泥を落とし、ざるに上げて乾かしてから包丁の背で皮をこそげ落とします。
  2. 300mlの出汁に里芋を入れて火にかけ、出汁の表面に泡がふつふつ出るくらいの弱めの中火で煮ます。
  3. まいたけ・しめじなどのきのこ類は、石づきを取って手で一口大に裂き、里芋が柔らかくなったら入れます。
  4. きのこに火が通ってぷりぷりしてきたら、味噌を溶き入れ、煮立つ前に火を止めて出来上がり。
●【主菜】秋刀魚(さんま)の塩焼き

秋刀魚は、わたを取らずに焼きます。小さい頃は苦くて苦手だったのですが、今はこれも楽しみのひとつ。詳しい焼き方は、この後の秋刀魚コーナーで。
大根おろしと、すだちも忘れずに。

●【副菜】秋茄子の揚げ浸し

「秋茄子は嫁に喰わすな」と言いますが、秋のおいしい茄子を嫁なんかにあげないぞ!という姑の言葉だという説、茄子は身体を冷やすのでおいしいけれど子を産む嫁には食べさせない方が良いという労わりの説がありますが、どちらにしろ、秋茄子はおいしいってことです。

  1. 出汁200mlに醤油とみりん(各大さじ2)を加えて味を調えてから火にかけて温め、なじませておきます。
  2. 茄子2本はがくの部分を取り除き、ヘタはついたままにします。
  3. 茄子の周りに縦に細かく包丁を入れ、火が通りやすくします。
  4. 油を180℃に温め、茄子を揚げます。
  5. 箸で挟んで少しへこむくらいになったら、引き上げて油をきり、熱いうちに出汁に浸して、粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やします。
  6. 針生姜をのせて出来上がり。
●【副々菜】春菊と油揚げの白和え 春菊は、なんだか春っぽい名前ですが、実は秋は香りが高くなっておいしい。やっぱり千葉県産が贔屓です。
  1. 豆腐50gをさらしか、ペーパータオルに包んで軽く重しをし、水切りしておきます。
  2. 春菊は、太い茎があれば、軽く十字に切り込みを入れておき、水に浸してシャキっとさせます。
  3. 塩を入れた熱湯で、さっとゆがき、すぐに冷水に取って冷やし、水気を絞っておきます。
  4. 油揚げは1/6に切り、そのまま網で焼いて焦げ目をつけて冷まします。
  5. 白胡麻大さじ1/2をすり鉢か、ミキサーにかけてしっとり油が出るまですります。
  6. 水きりした豆腐、すり胡麻、きび糖大さじ1/2、薄口醤油小さじ1/2、白味噌小さじ1を、滑らかになるまで混ぜます
  7. 春菊をささっと和えて、焼き油揚げを添えます
●【甘味】梨(幸水) 千葉県の名産品、幸水。果肉が柔らかく、多汁で糖度も高めの12度くらいです。全国でも人気の高い品種です。


それでは、秋だなぁ・・・という食卓の今回の主役。

 
秋刀魚(さんま)
 

秋刀魚(さんま)

秋になると、産卵のために太平洋岸を南下します。9月は北海道の東側、10月は三陸のあたり、11月頃には我らが千葉県の銚子沖にやってきます。南下しながら脂がのってきますので、9月はまだ旬のはしりの時期ですが、それでも今回の北海道から直送された秋刀魚は、網で焼いていると脂がしたたるほど。銚子にやってくるころには・・・今から楽しみですね!

選び方

頭から背にかけてずんぐりと太ったものは、脂がのっていておいしいです。
口と尾が黄色いと脂がのっている・・・といわれていましたが、最近の秋刀魚は一概にそうとも言えないようです。
また、一般的に新鮮な魚を見分ける方法としては、 目が透き通っているもの、エラが美しい紅色でくすんでいないもの、身が輝いていること、色がはっきりとして透明感があることなどがあり、秋刀魚も同じように見分けることが出来ます。

栄養

秋刀魚の脂には、血液をサラサラにする働きがあるEPA(エイコサペンタエン酸)、脳細胞が柔らかくなり、細胞を活性化して情報の伝達が早くなるため「頭がよくなる」などと話題になったDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれています。どちらも、善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす働きがあるので、生活習慣病の予防にもなります。
たんぱく質も、人の身体に必要な必須アミノ酸をすべて含む良質なもの。
栄養価の高まる旬の時期には、積極的に食べたいですね。

また、塩焼きにはよく大根おろしが添えられますが、これは大根おろしが魚の焦げに含まれる発ガン性物質を無毒化するという働きがあります。単なる箸休めではなく、ちゃんと効果のあるものなのですね。

保存方法

すぐ食べるのが一番おいしいに決まっているのですが、どうしても保存が必要な場合は、頭を落として内蔵を取り除き、水で洗ってラップに包み、冷凍してしまいましょう。
冷凍した時の解凍方法は、冷蔵庫に移して5時間くらいかけてゆっくり解凍します。焼いたり、煮物や揚げ物にしたり、火を通して食べます。

秋刀魚レシピ

 

秋刀魚の塩焼き

定番ですね。おいしい旬の間に何度登場してもうれしい塩焼き。
七輪をお持ちの方は、ぜひ炭火で!

  1. 水でさっと流してうろこを取ります。通常手に入るものは、漁の時に秋刀魚どうし身体がこすれて基本的にうろこはほとんど残っていませんので、ささっと軽く。

 

  1. 化粧塩をします。尾とヒレに塩をしっかり付け、焦げ落ちてしまうのを防ぎます。
  1. ふり塩をします。20cmくらい上から、塩を振り、全体に薄く付けます。海水塩など、ぜひおいしい塩を使ってくださいね。焼いた時に皮がはがれるのも防いでくれます。
  1. 焼き網に油を薄く塗り、よく熱してから、秋刀魚を置きます。火加減は、強火の遠火がベスト。魚は、頭を左にして盛り付けますが、盛り付けた時に上にくる面を先に焼きます。

  2. 色よく焼けたら、裏に返して、火を通します。

  3. 大根おろし、すだちと一緒に盛りつけます。

   
   
 

秋刀魚のお刺身

買ってきた当日なら、お刺身も良いですね。脂がのりきる前の北海道ものは、生で食べやすくてお刺身向きです。

  1. 頭を落とし、お腹に包丁を入れて内臓を取り除きます
  2. 水でお腹の中を洗います
  3. 中骨の上部に沿って包丁を入れ、半身をはがし、もう片方も同じようにはがして、3枚におろします
  4. 内臓があったところに腹骨があるので、そぎ落とします
  5. 尾のほうから皮をひきます
  6. 氷水で5分程しめます
  7. ふきんやペーパーで水分をふきとり、好きな大きさに切って、盛り付けます。
   
 

秋刀魚のなめろう

生で食べるなら、これもおいしい!ほかほかごはんと一緒に!

  1. お刺身を細かく切って、みじん切りのネギ、おろし生姜、味噌を混ぜて、全部一緒に粘りが出るくらいまで包丁でたたきます。
   
 

千葉の漁師料理 さんが焼き

漁師がとれたての魚をたたきにして薬味を混ぜ、板で焼いたのがはじまり。秋刀魚で作ってみましょう。

  1. なめろうを作ります。
  2. 丸く平たくのばして、フライパンで両面をこんがりと焼きます。
   
 

秋刀魚の煮付け

  1. 醤油:酒(1:1)に、みりんと生姜を加えて、鍋で沸騰させます。
  2. 頭と尾を落とし、内蔵を取り除いてから、身を半分に切り、沸騰した煮汁に入れて10分くらい煮ます。

 

梨の種類は、大きく分けて3種類。西洋梨、中国梨、そして日本梨です。
さらに日本梨は2つに分けられ、青梨と赤梨があります。青梨は二十世紀が有名ですね。
赤梨は、三水と言って、新水、幸水、豊水が有名です。千葉県は味が良いことで有名です。せっかく千葉に住んでいるのですから、地元びいきで千葉県産を食べましょう。

選び方

無傷で瑞々しいもの、高さがあるものより横に張りのあるものを選びます。青梨の場合は黄ばみ過ぎのもの、赤梨の場合は赤すぎるものは熟しすぎです。

保存方法

日本の梨は追熟しないので、鮮度の高いうちに食べるのが良いです。
保存する場合は、冷暗所で3〜4日、冷蔵庫で1週間くらいです。冷蔵庫は乾燥するので果物専用袋に入れると長持ちします。
そして、ヘタの部分を下にしておくと長持ちするそうですよ!

切った後は、りんごと同じように変色してしまうので、すぐに食べましょう。食べきれない場合は、塩水に漬けておくと変色を防ぐことが出来ます。


   

梨レシピ

 

梨のコンポート

甘味が少ない梨の時は、コンポートにするとおいしくいただけます。

  1. 梨2個を4つに割り、皮と芯を取り除きます。
  2. 鍋に白ワイン200cc、蜂蜜大さじ2を入れて火にかけます。
  3. 煮立ったら梨を入れ、15〜20分弱火で煮込みます。
  4. 粗熱をとったら煮汁ごと冷蔵庫で冷やします。
   
 

梨ジャム

たくさん手に入った時など、保存用に。基本の作り方は、5月号のいちごジャムと同じです。

  1. 梨は皮を剥いて芯を取り、一口サイズに切ります。重量の20%くらいの砂糖をまぶして、鍋に入れたまましばらく置きます。
  2. 水気が出てきたら、そのまま火にかけます。始めはフタをせずに強火で、ふつふつしたらアクを取ってレモン汁を少し入れ、あとは焦げないようにかき混ぜながら中火〜弱火で。
  3. とろりとしてきたら、保存ビンに入れて冷ましてから冷蔵庫へ。
  • 粒がゴロゴロ残ったままでも、軽く潰してもお好みで。
  • 砂糖は、「きび砂糖」や「てんさい糖」を使うと柔らかな甘味で、梨のほのかな酸味が引き立ちます。
  • 砂糖は、たくさん入れるほど保存性が高くなります。
  • 保存ビンは、熱湯かアルコールで消毒しておいてくださいね。
   
 

梨の冷たいスープ

ちょっと変り種ですが、こんなのも。

  1. 梨2個は皮を剥いて芯を取り除き、薄くいちょう切りにしておきま
  2. 玉ねぎ1/2個をみじん切りにしておきます
  3. 鍋にバターを入れて玉ねぎが透明になるまで炒めたら、梨も加えて全体にバターをまわします
  4. コンソメスープ150ccと、ローリエ1枚を入れてフタをし、時々かき混ぜながら煮ます
  5. 汁気が少なくなってきたら、火を止め、ミキサーでなめらかにし、冷蔵庫で冷やしておきます
  6. 食べる前に、生クリームを50ccくらい混ぜて、塩・胡椒で味を調えて出来上がり!

来月も、おいしいもの見つけてご紹介しますね。お楽しみに!