季節の食卓

みなさん、こんにちは。フードビジネスコーディネーターの加賀谷恭子です。

仕事がら、いろんな食材を扱って調理をしています。食材は、季節ごとにおいしいものがあって、それは普段忘れかけている昔ながらのものもあれば、新しく生まれたものまで、本当に様々。折角ですから、これから私が出会ったいろんな食材を少しずつ取り上げて、食材のことから考えて作る“季節の食卓”をテーマに、コラムを毎月更新していこうと思っています。 
中でも、私はお野菜を中心とした極々シンプルな調理のごはんを得意としております。だって、農家のみなさんが手間隙かけて作った、自然のチカラが溢れんばかりのお野菜に触れると、余計なことはしちゃいけないなって思うんですよ。お野菜とじっくりお話して、一緒に調理法を決めたりしています。

複雑な調理や、派手なディスプレイはしません。普段、おうちで出来て、いつもよりちょっぴりステキ…という食卓を提案していきます。食べ物を見たり、触ったり、おうちでのごはんが楽しい!って思っていただけたらうれしいです。気が向いた時に、ふらりと見に来てくださいね!


第5回 「今日も雨・・・おうちでゆっくり深呼吸。な食卓の巻」

雨、雨、雨・・・じめじめじめ・・・外出が億劫になる日が多い時期。家にこもって、窓の外の雨を眺めながら雨音をBGMに、ゆっくりお茶をいただく時間が好きです。特に中国茶は、この季節にぴったり。お湯を注いだら、深呼吸するみたいに香りを胸いっぱいに吸い込んで、聞茶(ききちゃ)をします。そして、何煎もお湯を継ぎ足し、変化していく香りと味、ゆっくりと流れていく時間を楽しみます。今月は、私が勝手に梅雨の時期の必須アイテムとしている、中国茶を丁寧に飲む食卓。もちろん、お茶菓子も忘れずに!

それでは、ゆっくり深呼吸な食卓です。


工夫茶器(くんふーちゃき)一式と、お茶菓子。
工夫茶器とは、心を込めて淹れるために工夫された茶器のこと。手間隙かけて、上質の香りを楽しむ時に使います。もともとは、青茶(後で説明しますね)を楽しむために作られたものですが、今では中国茶全般で使われています。
他にも、カンタンに楽しめるいろんな飲み方があり、私も普段は、マグカップに茶葉を入れてそのままお湯を注ぎ、茶葉が開いたところでふぅーふぅーと茶葉をよけながら飲んでいますが、ゆったりとした時間を過ごすなら、工夫茶器を使って。
お茶菓子は、身体も心もリラックス出来るものを手作りで。

では、工夫茶器の説明と、使い方です。

茶壺(ちゃふー)

ころんとした茶壺。一目惚れして買いました。これは、張さんという女性作家の作品。いろんな作家がいて、たくさんの茶壺があります。お気に入りを見つけてくださいね。使い込むほどに味が出てくるのが茶壺。育てるつもりで長く使って。青茶や黒茶(後で説明しますね)を煎れるのに向いています。

◆茶壺を洗う時は、洗剤を使わずに水だけでゴシゴシ洗い、 自然乾燥の後、乾いた布で磨きます。使い込むうちにツヤが出て 美しい風合いになりますよ。


左が茶杯、右が聞香杯、下に敷いてあるのが茶托

聞香杯(もんこうはい)

一度お茶を入れて、茶杯に移してから、残った香りを楽しむためのものです。
この柄は、桃と蝙蝠(こうもり)。桃は中国古来から仙人の食べ物(仙桃)とされ老長寿を意味し、蝙蝠の「蝠」は、中国語で「福」と同じ「fu」の発音をすることから、縁起が良いとされています。

茶杯(ちゃはい)

これで、お茶を飲みます。水色(お茶の色)を楽しむためにも、中が白いものが良いです。

茶托(ちゃたく)

聞香杯と茶杯を置きます。


ガラス製の茶海。竹製の茶盤の上に。

茶海(ちゃかい)

茶壺で淹れたお茶を一旦、茶海に全部移すことで、均一な味になります。

茶盤(ちゃばん)

茶器を温める時、お湯を流すことが多いので、これを敷いておくとその場で流せて便利です。流したお湯が下に溜まるようになっているんですよ。
茶船(ちゃせん)という器でも代用出来ます。もっと言うと、茶壺と聞香杯、茶杯、茶海が入る大きさの深めの器でも代用できます。茶器を温められれば、良いのです。

ドライフルーツの中国茶煮

水400ccを鍋で沸騰させ、中国茶葉を大さじ2杯入れて2分煮出したら火を止め、蓋をして1分蒸らします。濾して茶葉を取り除き、(茶葉は捨てちゃだめですよ!この後、茶葉レシピ紹介します)


はちみつ大さじ1杯入れて、好きなドライフルーツを全部浸るくらい入れます。常温になったら、お好みでラム酒を入れて香りづけを。冷蔵庫で保管しましょう。
◆今回使ったドライフルーツは、 いちじく、りんご、なつめ、さんざし、ぶどう、あんず です。

柚子の砂糖漬け

柚子の皮に砂糖をまぶして、乾燥させたもの。中国茶の合間に、フルーティーな香りとほんのりした苦味が、どちらの邪魔もせずぴったりなんです。

煎り黒豆

カリカリしたシンプルなものを噛みたくなるので、煎り豆は必需品です。

ドライなっとう

意外でしょ?納豆の香りが邪魔になりそうに思えますが、ドライならそれほど口に残りません。中国茶との意外なマッチング。味付けは、うす塩がオススメです。





それでは、のんびりな食卓の今回の主役

 
中国茶


緑茶(明前西湖龍井茶)/白茶(白毫銀針)/青茶(凍頂烏龍茶)/青茶(東方美人) 


紅茶(祁門紅茶)/黒茶(プーアル茶)/花茶(茉莉白龍珠)/花茶(薔薇茶)/工芸茶(カーネーション)

 

中国茶の種類

 

中国茶は、種類が多すぎてわけがわからない!・・・という方、まずは醗酵度合いだけ気にしてみましょうよ。お茶の葉は、全部一緒なんですよ。『カメリヤ・シネンシス』という椿科の木の葉です。
発酵度が軽い順に並べて、宣伝も兼ねて(?)ロコディッシュで扱っている茶葉の名前も書いておきますね。

〈無発酵〉 緑茶 明前西湖龍井茶(みんぜんせいころんじんちゃ)
〈弱発酵〉 白茶 白毫銀針(はくごうぎんしん)
〈弱後発酵〉 黄茶 君山銀針(くんざんぎんしん)
〈半発酵〉 青茶 安渓鉄観音(あんけいてっかんのん)
凍頂烏龍茶(とうちょううーろんちゃ)
阿里山金萱茶(ありさんきんせんちゃ)
東方美人(とうほうびじん)
〈完全発酵〉 紅茶 祁門紅茶(きーまんこうちゃ)
〈後発酵〉 黒茶 プーアル茶 熟茶(ぷーあるちゃ じゅくちゃ)

最近は、ペットボトルの烏龍茶も専門的になってきたので、意外と聞いたことがある名前が多いのでは?よく烏龍茶として売られているものは、青茶の部類です。

この他にも、ジャスミン茶や薔薇茶で知られる花茶(紅茶で言うとフレーバーティー)、 花を茶葉で包んで糸で綴じてあり、湯を注ぐとそれが開く、見た目にも美しい工芸茶などがあります。

工芸茶のカーネーション。透明のグラスに入れると、とてもキレイ。

 

 

中国茶の淹れ方

基本的に、中国茶は100℃の熱湯で淹れて香りを楽しみます。緑茶、白茶、黄茶は、65℃〜70℃くらいが甘味や旨味が引き立ちますが、ここでは工夫茶器に適した青茶でご説明いたします。
  1. 茶器を温めます。まずは、茶壺に熱湯をいれましょう。
  1. 茶壺から茶海に移します。
  1. 茶海から聞香杯、茶杯へ。
  1. 茶壺に茶葉を入れます。3〜5gくらいです。茶壺の底がちょうど隠れるくらいです。
  2. 熱湯をなるべく上の方から、茶葉がお湯の勢いで踊るように注ぎます。蓋を閉めたら溢れてしまうくらいいっぱいまで入れてください。
  1. 泡が浮いてくる茶葉もあります。その泡を切るように、横からスライドさせて蓋を閉めます。
    蓋の空気穴から熱湯が飛び出すので注意!
  • 黒茶の場合、ここですぐに一旦お湯を捨て、えぐみを取り除きます。「洗茶(せんちゃ)」と言います。
  1. お茶を1分くらい蒸らします。その間、茶壺の上から熱湯をかけて、さらに高温で蒸らして香りを引き立たせます。聞香杯、茶杯を温めた湯もかけてしまいましょう。
  1. 茶海に注ぎます。茶壺を茶海に乗せてしまって、最後の一滴まで注ぎ切ります。一旦、茶海に移すことで、味が均一になります。
  1. 茶海のお茶を、聞香杯に注ぎます。
  1. 聞香杯のお茶を茶杯に移します。
  1. これこれ!この聞香杯の中に残った香りがしあわせ〜♪
  2. そして、茶杯のお茶をいただきます。
 

保存方法

   
 

茶葉は、「湿気」「光」「匂い」に弱いものです。
キレイな茶葉は、ついガラス瓶に入れてインテリアとしてに飾ってしまいたくなりますが、アルミ缶などの外から見えないものの方が品質を保てます。
温度は常温で。冷蔵庫に入れる必要はありません。冷蔵庫は湿気が多いので、逆効果です。



中国茶葉を使ったレシピです

   
 

お茶ふりかけ

  1. 中国茶を飲んで楽しんだ後の茶葉は、水気を切り、器に広げてラップなしで電子レンジで2分。
    水分を飛ばします
  2. 茶葉をミキサーにかけて、 細かくします。粗いと口に残ることがあるので、しっかりと。
  3. じゃこ、鰹削り節、白ごま・・・その他お好みのものを入れて、醤油・みりんで味付けして、フライパンでカラカラになるまで混ぜ合わせて、出来上がり!
  • 冷蔵庫で保管して、ごはんのお供に・・・
  • いろんなお茶で試してみてくださいね。青茶はもちろん、プーアル茶なども合いますよ。

ジャスミン茶めし

  1. ごはんを炊く時に入れる水の分量だけ、ジャスミン茶を煎れて冷ましておきます。
  2. お米をといで、冷めたジャスミン茶と塩少々を入れて軽く混ぜ合わせ、炊きます。
  • アジア風の食事の時に、さっぱりぴったり♪
  • お茶ふりかけもぴったり♪

安渓鉄観音粥

  1. 米1合は洗ってざるに30分以上あげておきます。
  2. 粥の分量の水と、塩をひとつまみ入れて軽く混ぜ、炊く直前に安渓鉄観音5g(乾燥したままでOK)を一緒に入れて炊きます。
  • 味と香りが濃厚な茶葉がよく合います。安渓鉄観音以外でも、いろいろ試してみてくださいね。
  • 中国茶で炊いたお粥を、柴漬けと一緒に食べるのが好きです。

祁門紅茶の白玉だんご

  1. 祁門紅茶を淹れます。100gを取って器で冷ましておき、その間に残りを飲みます。
  2. 白玉粉100gに、冷ました祁門紅茶を少しずつ入れて、耳たぶの固さになるまで練ります。
  3. 沸騰したお湯に1で飲み終わった後の茶葉を入れ、適当な大きさに丸めた2を入れて、浮かんできたら1分くらい茹で、氷水にとります。
  4. 器に盛って、黒蜜やはちみつ、フルーツなどをかけて、出来上がり!
  • 花茶で作ってもおいしいですよー!

 

来月も、おいしい食材見つけてご紹介しますね!お楽しみにー。