いとうちひろのエッセイ「ニッポンの会社今昔物語」

電化製品全滅の日

派遣社員として某メーカー内のいろいろな職場を点々としていた頃、ある職場でまだまだ歳若い方が、続けて二人亡くなるということがありました。
お一人は中旬に、もうお一人は同じ月の下旬でした。
広い居室に沢山の従業員がいるとはいえ、同じ居室の中でひと月に二人もの同僚を失ったのですから、職場事体が重苦しい雰囲気なのは言うまでもないことなのですが、翌月に入ってからちょっと変わった出来事が起こり始めました。
朝、出社してきたら、居室内が何だか『寒い』んです。
冷房の寒さとは違う寒さ。なんて言ったらいいのか、ちょっとよくわからないのですけれど・・・・・・。

なんとなく、
「いやだなあ、気が重いなあ」
と思っていたんですが、始業時間を過ぎてしばらくしたら、コピー機とカラーコピー機が同時に故障しました。
「あらら、壊れちゃった」
と、庶務担当の女性がサービスセンターに電話していると、今度は居室内全てのプリンタが、ほぼ同時に故障。
「あらあ、これまで壊れちゃったの?困ったなあ」
と言いながら、庶務担当の女性がサポートセンターに復旧作業の為の追加連絡を取っていると、今度はシュレッダーが故障。
そしてトドメに、亡くなった方が所属していた部門のサーバー迄落ちて、復旧しなくなってしまったのです。
シュレッダーは、業者の方に『買った方が安いよ』と言われてしまい、サーバーは、常駐するサーバー管理者の手には負えないとのこと。

みんな、ひそかに凍える程感じているハズのこの寒さ。
会社だから、誰しも出社しないわけにはいきません。
偶然というには、あまりにもちょっとタイムリー過ぎます。

『エライ人、誰でもいいから早くアレを決断してくれ〜。』

と皆密かに願わずにはいられなかったのでした。

皆さんの職場でも、こんな経験はありませんか?
次回も、私自身が経験した『職場でのちょっと寒すぎる出来事』をご紹介しようと思います。

次号は7月1日に公開予定です。

【戻る】

Copyright© 2007 Chihiro Ito All rights reserved.