浦安LOHAS
 
 

2008年3月号


住宅についてのロハスを考える

(1)「ロハス」とは、90年後半にアメリカで生まれたライフスタイルの名称である。

Lifestyles Of Health And Sastainability の頭文字を採った略語(LOHAS)で、「健康と環境、持続可能な社会生活を大事にする暮らし方」をいう。地球の環境や農薬汚染の問題などに危機意識を持ち、新しい生き方や暮らし方を提唱するビジネスとして取組始めた人達がムーブメントを起こした。
アメリカで生まれたロハスは、日本でも03年後半頃から話題となり、アッと言う間に浸透し、日常会話の中で「ロハス」が口にされるようになった。
「健康と環境を大事にする生活スタイル」ロハスは、アメリカ、ヨーロッパ、日本等々の経済先進国では、地球温暖化、排出ガス規制等々の問題と共に、個人の生活スタイルとして今後益々増えていくことが想像できる。
このような生活スタイルを採る人々はロハスコンシューマーと呼ばれ、アメリカでは成人人口の約30%の6,300万人、ヨーロッパでは8,000万人がロハス消費者と言われており、日本でも3,000万〜4,000万人は居ると想像できる。

(2)「どうしてロハスがこんなに一挙に広がったのか?」

それは多くの企業がマーケティング活動やブランドイメージ構築の戦略に「ロハス」を積極的に取り入れたことが大きい。
90年以降のバブル崩壊とデフレ経済下で低価格競争に晒されていた企業にとって、「高くても売れる売り方」として低価格競争からの脱却の新しい切り口になったからである。
健康や環境を大事にしたライフスタイルを実践するロハス層は、「自分の価値観に見合う商品・サービスであれば、価格が高くても納得して買う」「価格が高い理由や背景がきちんと説明されていれば、むしろ積極的に購入する」消費者層なのである。例えば、食品、飲料、サプリメント等のメーカーにとっては、健康志向やメタボリックシンドロームが追い風になり、健康産業市場は急速に拡大した。
また、流通小売業では百貨店等がロハスフェアと銘打ったイベントを頻繁に開催したし、レストランや外食産業はロハスを意識したメニューを取り入れたし、住宅業界でもホルムアルデヒト削減建材や壁材に珪藻土を使う等々の住宅が増えた等々のことが起こり、「ロハス」が日本中に広く知れ渡ったのである。

(3)では「なぜロハスと言う概念がビジネスの世界と融合できたのだろうか?」

かっては「健康と環境」は企業が利益を挙げる為には対立する邪魔な概念だったからである。 例えば、中国やベトナム等の現状を見ると産業の振興の為には、工場排ガスや自動車による空気汚染や農薬被害等々はそれ程には気にしていられない状況なのである(かって公害問題で苦しんだ日本もそうだった)。
しかし、成熟社会になった欧米や日本では、企業と消費者の関係は大きく変わり、双方が歩み寄り、共生・共創する関係になりつつある。
消費者側から見れば、衣食住の様々な分野で技術が進歩し、その恩恵によって現在の快適な生活が成り立っていることを知っているので、例えば自動車の排気ガス問題を考える時、その便利さを享受しながら、少しでも排出ガスを減らす工夫をしようとハイブリット自動車に乗ったり、排気量の少ない小型車に買い換えたり、アイドリングを控える等々を考え始めたのである。 即ち消費者側も大量に商品を消費するだけの立場から、「健康と環境に配慮した物が欲しい」と自ら主張して、企業活動に大きな影響を与える生活者へと成長したのである。
他方、企業側でも、消費者の健康や環境問題を無視した企業活動など考えられない時代であることを認識し、企業市民として地域社会との関係を大切にし、健康と環境に配慮した仕事をしようとする企業も多くなって来たのである。
このように、消費する側と生産する側の双方が、成長し、距離が近づいた両者を結びつける為に最適なキーワードとして「ロハス」はピッタリだったのである。

(4)「住まい」「家」の「ロハス」についての幾つかの提案

人間が健康的に生きていくのには、衣・食・住が必要ですが、私が不動産業者としての経験が永いことから、今回は「住まい」「家」の「ロハス」について幾つかの提案をしたい、と思います。「家」は「家族の健康と幸せを守る場所」でなければならない。 更に「家」はそれ自体がどんなに素晴らしい出来上がりでも、その置かれた衛生環境・文化環境・安全環境・公園環境・運動環境・散歩環境・隣人環境等々の周囲環境が悪ければ、家族の健康と幸せは守れません。 即ち、家は本来的にロハスでなければならない物なのです。

@ 新築住宅のロハスについて
日本人は何故か新築住宅が好きです。 本当は2〜3年以上経過した家の方が、新建材に含まれているホルムアルデヒド等々の有害物質が抜けきって、健康で住みやすい家になるのです。 昔から「新築の家に年老いた親を住ませるな」と言いました。 新建材を使わない在来工法の時代にも、壁の湿気等々が抜けきらない新築住宅は、抵抗力の弱い老人に悪い影響を与えることが経験上判っていたからです。 輸血でC型肝炎やエイズになった人が大勢苦しんでおられますが、40年くらい前から「手術をすると病気になる」と言う噂がありました。 これなども科学的な証明はなくても経験上人々が知っていたことなのでしょう。 新築住宅が体に悪い、と言うのもこれと同じことだ、と思います。 まして今の時代はどうしても新建材や壁クロスやペンキや家具等々に有害物質が入っているからです。 建材に有害物質を含まない家を建てる工夫をすべきことは当然ですが、更にその上で、新築の家に入居する時は、少なくとも6ヶ月以上の期間経過後に入居する必要があります。 それより短い期間で入居する時は、せめて換気に注意しましょう。


A 中古住宅のロハスについて
住宅についてロハスを考えるのならば、中古住宅に住むことが理に叶っています。しかし、日本の住宅の平均寿命は30年しかありません。 日本の住宅の平均寿命が30年というのは、アメリカの住宅が44年、イギリスが75年と比べても、あまりにも短過ぎます。 これは、「まだ充分に使える家を取り壊して廃棄物にしている」ということです。

ちなみに、日本の中古住宅の取引戸数は年間約20万戸、住宅売買に占める中古住宅の占める割合はたったの13%しかありません。 アメリカの中古住宅の取引戸数680万戸、中古住宅の割合78%、イギリスの中古住宅の取引戸数180万戸、中古の割合89%と比べて、いかに日本の中古住宅の流通量が少ないかわかるでしょう。
米英との人口比から見ても日本でも中古住宅の流通量が約400万戸はないとおかしいので、約380万戸の住宅がまだ使えるのに廃棄物にされていることになります。
膨大な廃棄物となったまだ使える家の焼却によってCO2や有害ガスがどれだけ排出されているか考えると、この意味でも住宅廃棄物が環境汚染の元凶になっていると言えるのではないでしょうか。  これはまた、「衣食住」という国民個人の生活必需品の中でも一番高い買い物である家に対して、「新築住宅を建てる為に無理矢理大きなお金を使わせ、大きな借金をさせている」ということです。 これでは国民は、世界一の資産を持っているのに、自分と家族の幸せの為にお金を使う余裕が持てません。
早急に「既存住宅履歴認定制度」を充実して、「安心して中古住宅に住め、中古住宅が適正価値で取引できる」ように政策変更をすべきである、と思われます。

B 日本の中古住宅の流通量が少ないのは、新築が売れるようにした日本国の政策によるものです。 太平洋戦争終了直後、日本人の80%が借家住まいであり、自己所有家屋を持っていませんでした。 そこで、日本政府は「持家促進政策」をとって、国民の幸せと国内経済活性化を計ったのです。 新築住宅が売れると、建材と住宅機器が売れ、家具が売れ、自動車が売れ、住宅ローンが売れ、住宅が増えると、近隣商店街が発達し、土地の価格が上がりました。建築業者、不動産業者、銀行、住宅関連企業、生活関連企業も利益を上げ、その従業員も給料を上げることができました。 このように「新築住宅促進政策」は、経済効果が非常に大きいため、折からの人口増大時代に乗って、「戦後日本経済政策の目玉」として、日本経済の牽引役を果たしてきたのでした。 

C この日本国の「新築住宅促進政策」に従い、市場も形成され、銀行は「木造住宅は20年経過すると担保価値がありません」「マンションは42年経過すると担保価値がありません」と住宅ローンの対象にしないし、不動産業者は「木造住宅は20年経過すると評価価値は¥0になります」と平気な顔で言う時代が続いたのでした。  それを聞いた建ててから22年の一戸建てに住んでいる人は、「充分に満足して住んでいる自宅なのに、そんなものですか」と、内心の怒りを押し殺して対応するしかありませんでした。 冷静に考えると、これはおかしいでしょう? 40年〜50年は充分住める木造の自宅がどうして20年でタダになるのですか? 木造でも適切な補強や改修を行えば、50年以上100年くらい持つ、マンションなら60年〜100年持つのは、誰もが常識としてわかっていることなのではないでしょうか。 なのに日本では、このような非常識が常識になっているのは、減価償却制度の償却年数を建物の耐用年数として扱う銀行の考え方に原因があるのではないでしょうか。 
そもそも「減価償却制度」は「事業者が必要経費として控除できる年数を定めたものであり、建物の経済耐用年数を定めたものではない」のに、例えば木造建物は20年経過すると価値が¥0円になってしまう、と考えるのはおかしい、と思います。   木造住宅であっても経済耐用年数は50年〜60年あることは世間の経験則であり、特に「耐震補強工事やリフォームをすることで、建物の強度と価値が出る」ことを無視した評価方法である、と思います。   

D 「新築持ち家促進政策」は人口減少時代には合わない。なぜなら、すでに国民の75%以上が持ち家を所有し、日本は「今後年間70万人が減少する人口減少時代に変わります」ので、これ以上新築住宅を建てる必要がなくなってしまったからです。 一組の夫婦から1.3人の子供しか生まれていませんので、二組の親夫婦4人から2.6人の子供が生まれます。 ですから一組の子供夫婦二人は、両方の親夫婦四人の資産と両親の家二つをほぼ全部受け継ぐことができる計算になります。 一人家族や二人家族が増えているとはいえ、家余りの時代が近づいていることは明らかです。 こんな時に、「新築住宅促進政策」をとり続けることは明らかに時代に合わない方向であると言えるでしょう。

E 改めて考えてみると、新築住宅促進によるだけが経済活性化策ではないでしょう。「中古住宅に安心して住める」ようになれば、国民は新築住宅に大きなお金を使わないでよくなった分だけ、株に投資したり、車を買ったり、子供の教育や自分の成長の為に等々と「家族の幸せの為にお金を使うことができるようになる」、そうすれば、国民の持つ\1,535兆円の金融資産を使って国民は今より豊かな生活を享受できるし、個人消費は活性化し、今のGDP比55%から欧米並みの70%に上昇する可能性が大きく、それだけで日本ののGDPも今よりも15%位上がるはずです。 国民の豊かさと幸せを増進し、個人消費を上げることができ、それによってあらゆる企業は国民から資本を得ることができ、更に国内消費を対象とするあらゆる企業は活性化するという景気の好循環を生むでしょう。  建築業界の反対は予想されますが、「国民の幸せ実現」と「より大きな国民消費の拡大」の為に「中古住宅の安全と流通の促進」を進めることこそが、人口減少下の日本の今後あるべき大きな方向ではないか、と思われます。

F さらに、「住宅履歴書・認証制度」の充実で、「中古住宅に安心して住み・売る時に価値がある制度」にすれば、55歳以上の高齢者のほとんどは自宅を所有しているのですから、年金や健康保険や介護保険等々の老後不安は、自宅の価値があれば、それを貸したり売ったりすることで、自分で自分の老後に備えることができるようになります。
国の財政が苦しい折、増税して老後の不安を解消するよりも、国民自身が持つ自宅の価値を上げる政策で、「お金を使わずに、国民を安心させ、幸せにする政策が実現できる」のではないでしょうか。

G 既に例外的に認められた制度もあるので、これらを拡充・恒久化すべきです。
「耐震診断をして」「耐震補強工事をして」「新耐震基準を満たす建物については」
「住宅ローン控除」「登記手続き費用の減額」「買換損失控除」「取得税の減額」等々の制度が設けられていますが、これだけでは不十分であり、限時法を恒久制度化すべきものであると考えます。

(5)「中古住宅の流通促進」は「日本を元気にさせる!」

日本国民は、金融資産を¥1,535兆円、不動産等々の非金融資産を¥1,160兆円、合計で約¥2,700兆円(内約\500兆円は負債)の個人資産を持っています。 この内の70%強を55歳以上の高齢者が持っています。 こんなに資産を持っている日本国民のGDPに占める消費支出の割合は55%しかないのです。 これは政治家と政策が悪く、国民が安心してお金を使えないからです。 アメリカもイギリスも国民の消費支出は70%ですので、日本もこの世界一多い個人資産を喜んで自分のために使えるようにする政策を考えて断行すれば、それだけで個人消費は15%伸び、GDPを75兆円押し上げることができ、国内企業が元気になれるし、日本と日本人は元気になれるのです。
その為には、「住宅履歴書」と「その認定制度」を作り、日本国民が「安心して住み・売る時に価値のある中古住宅を持てるようにする制度」を国交省が創設し、金融庁や財務省と協力して、「国民の中古住宅の流通を促進する」ような税制を作り、銀行と不動産業者と建設業者を指導して、「20年以上の中古住宅に対する長期の住宅ローンが組める」ように、また「中古住宅にもきちんとした適正な価格で売れる」ようにすることです。 以下にその必要性の理由と根拠を述べます。

@ 「耐震診断」をして「耐震補強工事提案書」に従って「耐震補強工事やリフォームをして、強度が増した建物の価値を適正に査定する制度」が必要である。
構造計算ができる一級設計士による「耐震診断」と「耐震補強工事提案書」は¥15万です。 この「耐震補強工事指示書」に従って、外壁はそのまま、内壁を壊して、柱と耐震ボードを金具で固定するだけの工事なので、その上にクロスを張ればできあがりです。 補強工事費用は、耐震ボードと補強金具を使うだけなので、¥50万〜¥100万でできます。 室内リフォームの一つとして工事を行う方法なので、その他のリフォーム費用に耐震工事費用をプラスすればできます。 これが当社で工夫した、おそらく一番安い耐震補強工事である、と言えるでしょう。
これで「新耐震基準適合証明書」がもらえますので、ローン控除、取得税の軽減、登録免許税の軽減、親からの¥3,500万までの住宅取得資金に対する相続時清算制度の適用、補強工事費用の還付、固定資産税の軽減等々の得点がが利用できるようになります。

A 上記認定を「住宅履歴書」に記載し、その建物に対する「長期の住宅ローンが組めるようにする銀行への指導」が必要になる。 現状では、木造住宅は20年まで、マンションについては25年までを原則とし、それ以上古い建物への住宅ローンが長期では組みにくく、中古住宅の流通が阻害されているのが現実である。
B その他、中古住宅に対する、取得税の軽減、登録免許税の軽減、住宅ローン控除制度の適用、買い換え制度の適用、親から子供への住宅資金贈与の適用、および、その制度の恒久化が必要である。

C 福田総理の提唱される「200年住宅」は非常に必要な制度である、と思いますが、これが建設業界活性化の為だけに作られた制度であり、充分に使える建物を壊して新しく建て替えさせる為の制度であれば、片手落ちな政策になってしまいます。 国民の「本当の住まいに対する安心と幸せ」の為であれば、「中古住宅に対する耐震補強工事とリフォームによる適正な建物査定制度の充実」が促進され「中古住宅の流通の促進」が合わせて計られるべきであると考えます。

D その為には、国土交通省による「住宅履歴書制度の確立」と、「既存住宅に対する適正な評価と住宅ローンの貸付ができるように、建設業者と不動産業者と銀行への適切な指導」が望まれます。 

E アパート等の収益物件についても、中古住宅の改装補修でいろんな工夫を凝らして、今の時代に合った部屋に変えて、空室を埋めることができれば、空室で困っているオーナー様に喜んでもらうことができます。 地域の再開発と併せて、中古収益物件の再生は、今後の日本経済にとって重要な仕事になるでしょう。 以上、私は、今後は上記の方向への大きな経済政策の転向が必然的に起きるし、それにより日本は元気になる、と信じています。 

(6)浦安でロハス

以上、住宅についての「ロハス」=「健康と環境を大事にするライフスタイル」について日頃から思っていることを書きましたが、企業の経済活動と個人の生活態度とが歩み寄り、ロハスな浦安市として、地域の繁栄の中に個人の健康と幸せがある浦安市と浦安市民になれますように、と心から願っています。

Written by 今泉浩一


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