2008年3月号 住宅についてのロハスを考える(1)「ロハス」とは、90年後半にアメリカで生まれたライフスタイルの名称である。Lifestyles Of Health And Sastainability の頭文字を採った略語(LOHAS)で、「健康と環境、持続可能な社会生活を大事にする暮らし方」をいう。地球の環境や農薬汚染の問題などに危機意識を持ち、新しい生き方や暮らし方を提唱するビジネスとして取組始めた人達がムーブメントを起こした。 (2)「どうしてロハスがこんなに一挙に広がったのか?」 それは多くの企業がマーケティング活動やブランドイメージ構築の戦略に「ロハス」を積極的に取り入れたことが大きい。 (3)では「なぜロハスと言う概念がビジネスの世界と融合できたのだろうか?」 かっては「健康と環境」は企業が利益を挙げる為には対立する邪魔な概念だったからである。 例えば、中国やベトナム等の現状を見ると産業の振興の為には、工場排ガスや自動車による空気汚染や農薬被害等々はそれ程には気にしていられない状況なのである(かって公害問題で苦しんだ日本もそうだった)。 (4)「住まい」「家」の「ロハス」についての幾つかの提案人間が健康的に生きていくのには、衣・食・住が必要ですが、私が不動産業者としての経験が永いことから、今回は「住まい」「家」の「ロハス」について幾つかの提案をしたい、と思います。「家」は「家族の健康と幸せを守る場所」でなければならない。 更に「家」はそれ自体がどんなに素晴らしい出来上がりでも、その置かれた衛生環境・文化環境・安全環境・公園環境・運動環境・散歩環境・隣人環境等々の周囲環境が悪ければ、家族の健康と幸せは守れません。 即ち、家は本来的にロハスでなければならない物なのです。 @ 新築住宅のロハスについて
ちなみに、日本の中古住宅の取引戸数は年間約20万戸、住宅売買に占める中古住宅の占める割合はたったの13%しかありません。 アメリカの中古住宅の取引戸数680万戸、中古住宅の割合78%、イギリスの中古住宅の取引戸数180万戸、中古の割合89%と比べて、いかに日本の中古住宅の流通量が少ないかわかるでしょう。 B 日本の中古住宅の流通量が少ないのは、新築が売れるようにした日本国の政策によるものです。 太平洋戦争終了直後、日本人の80%が借家住まいであり、自己所有家屋を持っていませんでした。 そこで、日本政府は「持家促進政策」をとって、国民の幸せと国内経済活性化を計ったのです。 新築住宅が売れると、建材と住宅機器が売れ、家具が売れ、自動車が売れ、住宅ローンが売れ、住宅が増えると、近隣商店街が発達し、土地の価格が上がりました。建築業者、不動産業者、銀行、住宅関連企業、生活関連企業も利益を上げ、その従業員も給料を上げることができました。 このように「新築住宅促進政策」は、経済効果が非常に大きいため、折からの人口増大時代に乗って、「戦後日本経済政策の目玉」として、日本経済の牽引役を果たしてきたのでした。 C この日本国の「新築住宅促進政策」に従い、市場も形成され、銀行は「木造住宅は20年経過すると担保価値がありません」「マンションは42年経過すると担保価値がありません」と住宅ローンの対象にしないし、不動産業者は「木造住宅は20年経過すると評価価値は¥0になります」と平気な顔で言う時代が続いたのでした。 それを聞いた建ててから22年の一戸建てに住んでいる人は、「充分に満足して住んでいる自宅なのに、そんなものですか」と、内心の怒りを押し殺して対応するしかありませんでした。 冷静に考えると、これはおかしいでしょう? 40年〜50年は充分住める木造の自宅がどうして20年でタダになるのですか? 木造でも適切な補強や改修を行えば、50年以上100年くらい持つ、マンションなら60年〜100年持つのは、誰もが常識としてわかっていることなのではないでしょうか。 なのに日本では、このような非常識が常識になっているのは、減価償却制度の償却年数を建物の耐用年数として扱う銀行の考え方に原因があるのではないでしょうか。 D 「新築持ち家促進政策」は人口減少時代には合わない。なぜなら、すでに国民の75%以上が持ち家を所有し、日本は「今後年間70万人が減少する人口減少時代に変わります」ので、これ以上新築住宅を建てる必要がなくなってしまったからです。 一組の夫婦から1.3人の子供しか生まれていませんので、二組の親夫婦4人から2.6人の子供が生まれます。 ですから一組の子供夫婦二人は、両方の親夫婦四人の資産と両親の家二つをほぼ全部受け継ぐことができる計算になります。 一人家族や二人家族が増えているとはいえ、家余りの時代が近づいていることは明らかです。 こんな時に、「新築住宅促進政策」をとり続けることは明らかに時代に合わない方向であると言えるでしょう。 E 改めて考えてみると、新築住宅促進によるだけが経済活性化策ではないでしょう。「中古住宅に安心して住める」ようになれば、国民は新築住宅に大きなお金を使わないでよくなった分だけ、株に投資したり、車を買ったり、子供の教育や自分の成長の為に等々と「家族の幸せの為にお金を使うことができるようになる」、そうすれば、国民の持つ\1,535兆円の金融資産を使って国民は今より豊かな生活を享受できるし、個人消費は活性化し、今のGDP比55%から欧米並みの70%に上昇する可能性が大きく、それだけで日本ののGDPも今よりも15%位上がるはずです。 国民の豊かさと幸せを増進し、個人消費を上げることができ、それによってあらゆる企業は国民から資本を得ることができ、更に国内消費を対象とするあらゆる企業は活性化するという景気の好循環を生むでしょう。 建築業界の反対は予想されますが、「国民の幸せ実現」と「より大きな国民消費の拡大」の為に「中古住宅の安全と流通の促進」を進めることこそが、人口減少下の日本の今後あるべき大きな方向ではないか、と思われます。 F さらに、「住宅履歴書・認証制度」の充実で、「中古住宅に安心して住み・売る時に価値がある制度」にすれば、55歳以上の高齢者のほとんどは自宅を所有しているのですから、年金や健康保険や介護保険等々の老後不安は、自宅の価値があれば、それを貸したり売ったりすることで、自分で自分の老後に備えることができるようになります。 G 既に例外的に認められた制度もあるので、これらを拡充・恒久化すべきです。 (5)「中古住宅の流通促進」は「日本を元気にさせる!」 日本国民は、金融資産を¥1,535兆円、不動産等々の非金融資産を¥1,160兆円、合計で約¥2,700兆円(内約\500兆円は負債)の個人資産を持っています。 この内の70%強を55歳以上の高齢者が持っています。 こんなに資産を持っている日本国民のGDPに占める消費支出の割合は55%しかないのです。 これは政治家と政策が悪く、国民が安心してお金を使えないからです。 アメリカもイギリスも国民の消費支出は70%ですので、日本もこの世界一多い個人資産を喜んで自分のために使えるようにする政策を考えて断行すれば、それだけで個人消費は15%伸び、GDPを75兆円押し上げることができ、国内企業が元気になれるし、日本と日本人は元気になれるのです。 @ 「耐震診断」をして「耐震補強工事提案書」に従って「耐震補強工事やリフォームをして、強度が増した建物の価値を適正に査定する制度」が必要である。 A 上記認定を「住宅履歴書」に記載し、その建物に対する「長期の住宅ローンが組めるようにする銀行への指導」が必要になる。 現状では、木造住宅は20年まで、マンションについては25年までを原則とし、それ以上古い建物への住宅ローンが長期では組みにくく、中古住宅の流通が阻害されているのが現実である。 C 福田総理の提唱される「200年住宅」は非常に必要な制度である、と思いますが、これが建設業界活性化の為だけに作られた制度であり、充分に使える建物を壊して新しく建て替えさせる為の制度であれば、片手落ちな政策になってしまいます。 国民の「本当の住まいに対する安心と幸せ」の為であれば、「中古住宅に対する耐震補強工事とリフォームによる適正な建物査定制度の充実」が促進され「中古住宅の流通の促進」が合わせて計られるべきであると考えます。 D その為には、国土交通省による「住宅履歴書制度の確立」と、「既存住宅に対する適正な評価と住宅ローンの貸付ができるように、建設業者と不動産業者と銀行への適切な指導」が望まれます。 E アパート等の収益物件についても、中古住宅の改装補修でいろんな工夫を凝らして、今の時代に合った部屋に変えて、空室を埋めることができれば、空室で困っているオーナー様に喜んでもらうことができます。 地域の再開発と併せて、中古収益物件の再生は、今後の日本経済にとって重要な仕事になるでしょう。 以上、私は、今後は上記の方向への大きな経済政策の転向が必然的に起きるし、それにより日本は元気になる、と信じています。 (6)浦安でロハス以上、住宅についての「ロハス」=「健康と環境を大事にするライフスタイル」について日頃から思っていることを書きましたが、企業の経済活動と個人の生活態度とが歩み寄り、ロハスな浦安市として、地域の繁栄の中に個人の健康と幸せがある浦安市と浦安市民になれますように、と心から願っています。 Written by 今泉浩一 Copyright©
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