浦安LOHAS
 
 

2008年1月号


懐かしい昔の面影 浦安魚市場

浦安町と呼ばれていた頃から約五十年。地元に根付き、東西線と共に年を重ね、浦安の町とたくさんの人々の食文化を支えてきた町の台所であり、大切な町のシンボル「浦安魚市場」。

 「浦安魚市場」の歴史は古く、昭和初期、数店で今の堀江に市を開いた。その後、浦安橋近くに移り、昭和28年に組合を結成し市場を開く。そして、昭和46年3月、「浦安魚市場総合食品センター」という名称で現在の北栄に移ってきた。昭和40年代に海面埋め立て事業が始まる前は、のりの養殖やあさり漁などで栄える漁業の町だった「浦安」。そんな面影を残しているのがここ「浦安魚市場」である。

浦安魚市場の朝は早い。中でも早いお店は朝の2時頃から仕込みを開始する。私も取材のため、朝3時過ぎ市場に向かった。
その日はこの冬一番の冷え込み。カメラを持つ手が悴む。市場についた時にはすでに何台もの仕入れのトラックが集まってきていて寒さを感じさせないくらいの賑わい。その中には「行商」と呼ばれるトラックなどで商品を売り歩く人達がすでに仕入れに来ており、その日最初のお客となっていた。
当初「市場」のイメージは、「素人は受け付けてもらえないのではないか」と勝手に遠慮してしまっていたし、お客の主体は「業者」で「卸売り」を行う場所だと思っていた。なので、魚一切れだけ買うというのは失礼にあたるのではないかと思っていた。しかし、市場の人たちは驚くほどきさくで、親切だった。一見頑固そうに見える職人も、時より見せる笑顔や言葉一つ一つに飾ることのない優しさが感じられ、とても格好よかった。
新鮮な魚を目の前に買わずにはいられなくなり「切り身2切れ」を購入する。「焼きにするならこれがいいよ。おにぎりにするなら、これがいいね。」魚のことは無知な私の初歩的な質問にも笑顔で丁寧に答えてくれた。
「スーパー」は食品を購入する場所だが、「市場」は食品そのものだけでなく、さばき方やおいしい料理の仕方、さらには人の温かさやぬくもりを感じさせてくれる場所でもあった。

丸正 まぐろ専門店「丸正」の朝は早い。築地から仕入れたマグロを4時の開店に合わせてさばいていく。
マグロ一筋50年以上の店主は今年で83歳。今でも現役の職人だ。「丸正」は、店主とその息子の親子2代で店を構える。店主の昔からの魚のさばき方はまさに「職人技」。見た目以上に力が必要とされるわけだが、店主の手さばきには、2代目も頭があがらないという。
根っからのマグロファンの私は、中おちを少しいただいてみたのだが、やはり旨い。濃厚な味なのだが魚の臭みなどは全くなく、さっぱりして甘みがある。久しぶりにこんな旨いマグロに出会え、感激である。

本澤うなぎ店 少し歩くと、市場の一角からこうばしい香りがしてくる。浜松で取れた新鮮な「うなぎ」を、毎朝4時からさばきその場で焼く。味よし、栄養よし、カロリーに至っては、牛肉の数十倍といわれ、蒲焼は江戸時代から美味しい食べものの代表である。
女性3人で店を構える「本澤うなぎ店」は、華やかで活気に満ちている。今年で77歳になるという店主は、この道47年の職人である。驚くほど肌が綺麗で、聞くとそれも「うなぎ」のおかげだと言う。
「祖父の代からの『秘伝のたれ』で焼く蒲焼」は絶大な人気で、飽きることのない味である。また、タイミングが合えば「うなぎの肝焼」に出会うことができる。うなぎ1匹から1個しか取れない貴重な肝を5・6個串に刺して串焼きにしているため、数がない。ほろ苦く香ばしい肝焼きは一度食べるとまた食べたくなるくせになる味だ。

本澤うなぎ店またまた、こうばしい香り・・・その香りの出所を探る。中をのぞくとあさりを串に刺し、昔から変わらない手焼きで焼く「焼きあさり」が焼かれていた。
あさりやはまぐりの産地として有名だった浦安は、かつては「貝の町」とも呼ばれていた。名物の「焼き蛤」「焼きあさり」は市の優良名産品にも指定される浦安の味で、その伝統の味を守り続けているのが、創業70年の老舗「さつまや」である。
醤油、みりん、砂糖だけで添加物を一切使わず、手焼きで焼く「焼き蛤」「焼きあさり」は老若男女問わずファンが多く、市場に来ると「買い食い」したくなる。焼きたても美味しいことは間違いないのだが、時間が経つとたれが染み込みまた深い味わいになると言う。甘辛いタレの味は、お酒やビールの肴によく合いそうである。

山長 「あさり」の佃煮が買えるのが「山長」。浦安名物というだけあって、普段の食卓だけでなく、お土産や贈り物として買っていく人も多いという。初めて見る佃煮の計り売りであるが、自分の好きなものを必要なだけ買えるのが嬉しい。
自宅用だと袋に入れて売ってくれるのだが、お土産や贈り物と言うと、箱に詰めてくれる。これもまた、その場で選びながら詰めてくれるため、送る人の好みに合わせてその人だけのセットを作ることができる。

丸茂海苔店 本場江戸前にこだわりをもつ海苔問屋「丸茂海苔店」。昭和22年、終戦と同時に浦安に店を構える老舗である。色、味、香りへのこだわりは徹底しており、大相撲東京場所・大阪場所の相撲土産としても売られるほどで確かなものである。
店には「板海苔」と呼ばれる生の海苔が売っているのがとても珍しい。「板海苔」は海苔本来の強烈な臭いを持ち、香りを楽しみたい人が自分で炙って食べるという。これも「漁師町浦安」ならではのこだわり。
千葉の海苔は全国的にも香りが強く、海苔そのものを味わうことができる。海苔にも色々な種類があり、香りを食べると言われる「青まぜ」は、お餅など具材がシンプルなものに最適である。また、逆に具材を際立てるのは「黒海苔」。黒海苔は香りよりも旨味があり、巻物などに合う。「会話の中から自分の好みの味を見つけてほしい」と3代目店主。

浦安名産の焼き蛤や佃煮、目の前でさばきながら焼く蒲焼・・・。「魚市場ならではの空気」を満喫し、漁師町だった頃の懐かしい風景を皆さんも是非体感して欲しいと思う。

Written by Erina Shiomi


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