甲斐: |
具体的に言うと、最初のパラダイムでは、防風林や藁葺き屋根の家など、共生関係が必然的に生まれる生活があり、それが街並みやコミュニティをカタチづくっていたのに対し、いまの「自立型孤立」のパラダイムでは、個人は外環境とも他人とも関係を持つ必要がなく、孤立した住環境をつくり、街並みも統一感のないランダムなものになってしまっているということがあります。 |
藤田: |
確かに30年前に比べると、日本の街並みはずいぶん変わりましたし、昭和の家と平成の家では、隔世の感があります。 |
甲斐: |
だからといって私は昔に帰ろうなどとはいいません。人は一度、便利さを手に入れたら後戻りすることはできませんし、環境のためだからといって、きゅうくつなことやがまんを強いることは間違っていると思うのです。なぜなら誰でも快適を求めますし、快適でないことは長続きしないからです。 |
藤田: |
だから次のパラダイムは、「自立型共生〜便利さも豊かさも同時に手に入れる時代」でなければならないとおっしゃるわけですね。 |
甲斐: |
そうなんです。次のパラダイムは、エコロジーのためにがまんしたりするのではなく、自分というエゴの快適を追求していくと、実はそれがエコになるというエコロジーです。 |
藤田: |
それが「自分のためのエコロジー」であり、自分を出発点とするエコロジーこそが、隣人を、街を、さらには地球をエコにしていくということですね。 |
甲斐: |
本来、環境とは「自分からつながるすべてのこと」です。まず自分という出発点ではじめないとダメなんです。 |
藤田: |
だから「経堂の杜」をまずつくられたのですか。 |
甲斐: |
ええ。まず自分から始める。それが、住まいづくりだったんです。 |
藤田: |
ぜひ次回は、「経堂の杜」のお話を聞かせてください。 |